Vodafoneの女性の力でイノベーション創出を目指すアクセラレータープログラム事例
Vodafoneがドイツで女性支援特化のアクセラレータープログラムを実施
Vodafone傘下のシンクタンク「the Vodafone Institute for Society and Communications」が主導でデジタル領域での女性に関連する社会課題解決を目指すスタートアップ支援に特化したアクセラレータープログラム「F-LANE」の運営を開始した。
1.欧州の大手通信キャリアも続々とアクセラレータープログラム運営を開始
欧州の大手通信キャリアもデジタル領域での新たなトレンドの中でイノベーション創出を目指すべく、ここ数年で続々とアクセラレータープログラムの運営を開始している。
スペインに本社を置くTelefonicaの「Wayra」、フランスOrangeの「Orange Fab」、ドイツDeutsche Telekomの「hub:raum」、イタリアのTelecom Italiaの「TIM #Wcap」など各国で大手通信キャリが続々とアクセラレータープログラムを開始している。
いずれのプログラムも共通しているのが、通信キャリアのビジネスの裾野の広さを反映し、シード/アーリーステージのスタートアップをテーマについて細かく絞らずにIoT、AI、ビッグデータなどITトレンドに関連する幅広いイノベーション領域で募集を行い、有望なスタートアップの模索を行っている。
Vodafoneもニュージーランドで「xone」という6か月間のアクセラレータープログラムを開催しており、下記のようなテーマでのスタートアップの募集を継続的に行っている 。
「xone」での募集テーマ
Internet of things
Big data
Smart homes and cities
Mobile agriculture
Mobile health
Mobile education and family
Mobile payments and commerce
Cloud
2.女性支援に特化したアクセラレータープログラム「F-LANE」
通信キャリア各社がアクセラレータープログラムを積極的に展開する中、Vodafone傘下のシンクタンク機能を持つ「the Vodafone Institute for Society and Communications」は、デジタルの先端領域でのトレンドに関連するテーマ設定を行う他のキャリア系アクセラレータープログラムと異なり、「女性の社会課題解決」、「女性起業家の力で革新を起こすビジネス」という対象に着目したアクセラレータープログラムとして「F-LANE」を開始している。
「F-LANE」はドイツでのソーシャルビジネスに特化したベルリン拠点のイノベーションセンターの「Impact Hub Berlin」、ソーシャルビジネス起業家向けビジネスクール「Social Entrepreneurship Akademie」と共同で運営を行っている。
「F-LANE」のプログラムは2017年2月よりドイツのベルリンにおいて6週間にわたって実施。メンターからのメンタリング、プログラム中の滞在費用をカバーする最大1万2000ユーロの資金提供がある他、子供を持つメンバーがいる場合は、プログラム期間中の保育サービスも受けることができる。
プログラム終了後に、有望なアイデアを持つスタートアップはグローバルでのVodafoneのネットワークを活用した協業の可能性も与えられる。
3.「F-LANE」に選出されたスタートアップ
女性支援に特化した「F-LANE」には世界52ヵ国、142社のスタートアップから応募があり、以下の5社がプログラムに選出されている。
Ask Without Shame(ウガンダ)
スマホアプリ、Whatsapp、SMS、電話経由で性に関連した問題を匿名で専門家に相談できるサービスを開発。性に関連した相談が恥ずかしくて相談できない、そんな若い世代の女性のニーズに答える。
Lensational(香港)
中古のデジタルカメラを新興国に届け、写真撮影トレーニングを現地のNGOを通して女性に提供。写真はLensationalaが運営するWebサイト上でオンライン販売し、得られた収益を女性に分配する。
Securella(香港、イギリス)
Securellaは女性が危険な状態に置かれた際、即座に家族や友達、警察に通知できるウェアラブルデバイス。
Digisitter(ドイツ)
子守を支援するオンラインプラットフォーム。スケジュール調整、連絡、子守サービスの予約管理、を一元管理できる。
Wazi Vision(ウガンダ )
6~15歳の子供に目のケアサービスを提供。具体的にはアプリにより目の状況を診断し、結果に合わせて眼鏡を提供する。
4.有望スタートアップ確保に差別化が求められるプログラム運営
Vodafoneの「F-LANE」の取り組みは女性の社会課題の解決にインパクトを与えるCSR活動としての位置付けが打ち出されている。
しかし、大きなコスト欠けて実施されているプログラムであり、当然ながらそれだけでない実利的な狙いもある。すでにグローバルで多くのアクセラレータープログラムが乱立しており、スタートアップにとって魅力のないプログラムは有望なスタートアップからの応募を集めることに苦戦するようになっている。
そのために対象とするスタートアップのターゲットを絞り込み、そこに集まるスタートアップにとって魅力的に感じられるプログラムとして設計することでで有望なスタートアップを集める狙いがある。
グローバルで乱立するアクセラレータープログラムの中で、有望なスタートアップを惹きつけるために、単純なデジタル領域のトレンドとはことなるテーマ設定も、新しくプログラムを開始する企業にとっては考えていく必要がある。
執筆者
株式会社ベルテクス・パートナーズ
INNOVATION SOLUTIONチーム
大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。
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