アジアでも立ち上がり始めた機械学習/AIスタートアップ
アジア初の機械学習/AIアクセラレータプロブラムの始動
これまで機械学習/AIでのスタートアップの話題といえばシリコンバレー発か、日本で情報収集を行なっていれば国内の機械学習/AIベンチャーが中心であり、他の地域でのスタートアップのことが話題に上ることは少なかった。
しかし、アジアで初のAI/機械学習のスタートアップに対象を特化したアクセラレータプログラム「Zeroth.AI」が香港で2016年7月に設立され、シリコンバレー、日本だけに留まらずアジア全域で機械学習/AIを活用したビジネスの立ち上がりが見え始めつつある。
2016年11月にアクセラレータプログラムの第1回バッチが開始され、Zeroth.AIの節立された香港に限らず、香港、台湾、シンガポール、ベトナム、インド、オーストラリア、アメリカとアジア・パシフィックの幅広い地域のスタートアップがプログラムに参加している。
1.多様な分野から集まった10のスタートアップ
Zeroth.AIでは、機械学習/AIというキーワードの下で、ディープラーニングを活用したデータ解析ソリューションから、チャットボット/AIアシスタント、画像解析など様々な領域で事業展開を行っているスタートアップが集まりサービスのブラッシュアップを進めている。(詳細)
2017年2月24日に投資家向けにInvestor Dayというかくスタートアップのビジネスモデルのプレゼンを実施予定であり、そこで発表される事業プランで今後の成長が占われる。
今回のバッチでの10社それぞれ興味深い技術/サービスを持っているがその中でも興味深い3社をピックアップしてみたい。
バイオセンサーを用いたペットモニタリングデバイス「aniWARE」
特許取得出願中のペットにつけるバイオセンサーで、ペットの健康状態を常時モニタリングして機械学習による解析を行い、ペットの体調などに異常を検知した場合、飼い主に通知を行う。
国内でもペットのモニタリングを行うデバイスはいくつかリリースされているが機械学習による異常検知と通知までサービスに盛り込んでいるというのが先進的である。
加えて、将来的にはペットの行動だけではなく機嫌まで検知しようとしており、かなりチャレンジングなサービスを展開しようとしていると言えるだろう。
機械学習を用いた画像検出技術「Object AI」
同社はAIを活用した画像認識エンジンで画像検出/加工を行うアプリケーションの提供を目指す。 例えば、ECサイトに掲載する商品写真を撮影した際の画像の切り取りや写真加工など、フォトショップで行う作業を自動で素早く最適な形で処理してくれる。
この技術を活用したアプリケーションが製品化されれば従来フォトショップでデザイナーが行っていた作業がさらに高速化/簡素化することができるので、画像加工の敷居を大幅に下げることが可能になるだろう。
人工知能を用いた稲の生育管理と収量予測システム「Sero」
スマホのカメラで稲の葉を撮り、Seroのクラウドにアップすると画像解析により、稲の生育状況や病害の状況を分析して、対策などのアドバイスが自動で通知される。
さらに継続的に撮影を行うことで、天候や過去の収量データなどを合わせて解析することで収量予測まで確認することができる。
ドローンや専用IoTデバイスを活用したデバイスに投資を伴う同種のサービスは他の国でも見られるが、スマホで写真を撮るだけというデバイスを扱う農家のユーザーは手軽に、その一方でクラウド側ではAIによる画像解析/データ分析エンジンによる先端的な技術を活用して農家のユーザーにアドバイスを提供するというのは新興国ならではの発想のサービスだろう。
2.シリコンバレー/日本だけではない機械学習/AIソリューション
機械学習/AIというとシリコンバレーや国内での先端的なアルゴリズムを活用したサービスに目が向きがちになるが、アジアにおいてはそれらとは少々異なる視点で開発されたサービスが登場しつつある。
どれだけのサービスが実際に市場に受け入れられるものとして立ち上がってくるものかは不透明ではあるが、シリコンバレー/日本とは異なった今後のアジアでの機械学習/AI関連のサービス/ソリューションについては、日本企業が国内及び海外での機械学習/AIを活用したサービス/ソリューションを検討する上で参考にできるものもあるのではないだろうか。
執筆者
株式会社ベルテクス・パートナーズ
INNOVATION SOLUTIONチーム
大手通信会社、総合商社、大手メディア企業、クラウドベンダーなど多様な業種での新規事業創出推進支援を実施。各メンバーの支援実績や知見の活用と外部パートナーとも連携しながら業種を問わず大手企業における新規事業/イノベーション創出に関連するソリューションを提供。